自賠責には保険と共済、つまり自賠責保険と自賠責共済が存在します。自賠責保険とは保険会社が販売している自賠責で、自賠責共済はJA共済などの共済が販売している自賠責です。保険と共済は建前では同等として扱われていますが実務ではJA共済だけが異なります。
法律の条文では「自動車損害賠償責任保険及び自動車賠償責任共済」や「保険・共済」といったように、自賠責保険と自賠責共済を同等に表現しています。また、支払い基準等についても自賠責保険(共済を含む)といったように同列に規定され、両者には違いがない事を説明しています。
もちろん、自賠責保険であれば認められるものが、自賠責共済で認められないといった不公平な決まりもありません。
しかし、実務では自賠責保険と自賠責共済の間には大きな差があるという事実は実務家であれば常識と言っても過言ではありません。(*ここからの文章の自賠責共済とはJA共済の事です)
自賠責保険とJA共済連の違い
何故、同じ法律や規則、同じ基準で運用されている自賠責なのに、自賠責保険と自賠責共済の間で違いが生じるのかというと、人身事故の調査をする機関が違うからです。自賠責保険会社は、どの保険会社であっても、その損害の調査を行うのは損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所です。つまり、自賠責保険会社というのは窓口であって、実際の調査はすべて同じ自賠責調査事務所が担当しています。これに対して、自賠責共済の場合は、自賠責調査事務所を利用しません。つまり、自賠責共済は独自に損害の調査を行う事で、自賠責調査事務所とは異なる判断をする事があります。
これは、自賠責の後遺障害認定基準は、労災の後遺障害の認定基準と同じですが、実際には認定される等級が異なるケースがあるという事実に似ています。ただし、自賠責と労災では、確かに同じ基準を採用しているものの、その後遺障害を判断する材料(資料等)が異なるので、結果が異なるという理由があります。さらに自賠責も「原則として労災保険の認定基準に準拠」と説明しており、絶対に同じとは説明していません。
しかし、自賠責保険と自賠責共済は原則も例外もなく、採用する法律や規則、基準は全く同じです。なのに結果が異なるというのはおかしいと言えます。基準が同じでも、それを使って調査をする母体が異なれば結果が異なるのは想像できますが、法律上は同じなのです。
この結果の違いは明確ではなく実務で感じ取るしかないのですが、「違う」という点においては、実務家は口をそろえて言います。感じるところは、自賠責共済は、損害の小に厳しく大に優しいといったところでしょうか。
もっとも、自賠責保険とJA共済には書式の違いや後遺障害の結果の詳細(別紙)での言い回しには明確な違いがありますので、「違う」事は明らかにわかります。
*JA自賠責共済の調査業務は平成28年10月から徐々に損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所に移管されます。これは平成30年10月に移管が完了し、以後はJAでも、自賠責保険と同じ調査委が行われることになりました。
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