CRPS,カウザルギー、RSD

CRPS(後遺障害) 傷病別後遺障害への道

CRPS,RSDとは傷病名です。カウザルギーは症状を形容する言葉です。例えば診断書には次のように記載されます。

診断名:複合性局所疼痛症候群(CRPS

具体的な症状:右上肢にカウザルギー症状を認める

ただし、医師によっては「カウザルギー」が診断名として記載されることもあります。

医学において診断名は大切ですが、それはあくまでも治療に有用な為に診断されることになります。診断名は所見から医師によって診断され、診断名がつけば医学的知見に基づいた適切な治療が行え、効率的かつ安全な治療が行えるため大切です。

しかしCRPSの患者を治療するH医師はこう言いました。「誰がどう見てもCRPS。普通に暮らしていてもCRPSは発症しない。患者の受傷歴をみればどう見ても交通事故が原因でしょ。我々(ペインクリニックの医師)は目の前の症状に対して治療を行う。ただそれだけ。」

担当医が断言する「CRPSである」とい状態が自賠責ではCRPSとして認められない。このようなことは(診断と認定の温度差)は後遺障害の認定実務では当然のように存在します。ただ、こういった場合でも、どちらかに誤りがあるわけではありません。其々の役割や立場が異なる中で、特に自賠責では限られた資料のみによる事故による後遺障害の認定という判断基準に基づくからで、臨床において治療を行う医師とはスタンスが根本的に異なります。

CRPSの被害者は精神的な負担を特に強く受けることが多く、そのストレスは自律神経の不調を増強させます。自律神経が関与していると言われているCRPSの治療上、とても良くない事です。被害者の負担の軽減のために各分野で経験の豊富な専門家によるサポートを受けるのが望まれると思います。

CRPSとは?

CRPSはかつてタイプ1とタイプ2に分類されCRPSタイプⅠを反射性交換神経性ジストロフィー、CRPSタイプⅡをカウザルギーと呼ばれていました。しかし、近年ではこの分類では説明できないCRPSの報告などが増える中、この分類の有用性が疑問視され、慢性の神経障害性の疼痛を単にCRPS(複合性局所疼痛症候群)と呼ぶようになりました。

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は強い痛みとは別に特徴的な症状を併発します。それは皮膚の異常です。皮膚の異常は腫れやむくみ、発汗の減少(あるいは増加)、色の変化、感覚が過(アロディニア)になるなど多岐に渡り、その結果あるいは時を同じくして骨の萎縮や関節の拘縮が生じます。

自賠責の認定基準では、複合性局所疼痛症候群(CRPS)を単なる痛みではなく「特殊な性状の疼痛」として反射性交感神経性ジストロフィーカウザルギー症状の2つに分けて特別な基準を設け、等級を定めています。

自賠責のCRPS認定基準は2つ

長期間続く痛みを慢性疼痛といいますが、中でも特に外傷や手術が原因で生じる慢性の神経障害性疼痛を複合性局所疼痛症候群(CRPS)といいます。特徴的な症状として不釣り合いな強い痛みと灼熱痛(焼けるような痛み)があります。単なる「疼痛」に対する等級は12級または14級が認定されると決められていますが、CRPS(複合性局所疼痛症候群)の場合は通常の痛みと区別した基準と等級が規定されています。

交通事故の自賠責では、CRPSをカウザルギーとRSD(反射性交換神経性ジストロフィー)の二つに分けて基準し、それぞれ等級を7級、9級、12級と定めています。

CRPS(複合性局所疼痛症候群)と診断され、客観的にも明らかな慢性疼痛を抱えていたとしても、自賠責では「後遺障害には該当しない」との判断がなされる場合があります。

総じてCRPS(複合性局所疼痛症候群)の認定は厳しいと言われていますが、なぜ厳しいと言われているのか認定基準を踏まえて説明を加えたいと思います

認定基準上の「カウザルギー」

カウザルギーと呼ばれる症状があります。カウザルギー症状とは外傷後に生じるとても強い焼けるような痛みで、灼熱痛と表現されます。診断上では過去にCRPStypeⅡと呼ばれていましたが、今では単にCRPS(複合性局所疼痛症候群)と呼ぶようになっています。

自賠責ではCRPSをカウザルギーとして「末梢神経の不完全損傷によって生ずる灼熱痛」と規程し、その内容や程度に応じて7級、9級、12級を認定するとされています。

また、認定基準の注意には、その具体的な症状を「血管運動性症状、発汗の異常、軟部組織の栄養状態の異常、骨の変化(ズディック萎縮)などを伴う強度の疼痛」「疼痛の性質、強さが病的な状態」としその原因を神経の不完全損傷によって生じるものだと説明しています。

後遺障害としてのカウザルギー

カウザルギーは一連の症状の事を意味しますが、一般的な痛みと異なるその特徴は、病的な強い痛み、灼熱通(焼けるような痛み)が長期的に続き、皮膚の異常、知覚の異常や筋力の低下などの神経症状が伴うもので一様ではなく多様です。このような多様な症状の認定は、自賠責の後遺障害に重要な4つの大原則に当てはめることが難しいことが多いです。

特に受傷直後からカウザルギー症状を呈することは医学的にも考えにくいにもかかわらず、このような事情から事故にって生じたCRPSということ自体が認められないこともあります。

カウザルギー症状の原因でもある神経の不完全損傷の場合は、神経の断裂のように完全な麻痺が生じるわけではなく、わずかな知覚の異常や気が付かない程度の筋力低下などが生じることもあります。このような神経症状は見逃されることが多いため、受傷によって神経の不完全損傷が生じたかのかどうかわからず、CRPSに事故との因果関係が認められないこともあります。

受傷直後、初期段階で神経症状が見逃されると、神経損傷の有無がはっきりせず、受傷によって生じた神経症状はなかった(あくまでも自賠責の判断基準上のこと)という事にされます。

そうなると神経の不完全損傷を前提とするカウザルギー症状は、自賠責でいうところの「本件受傷との相当因果関係を認めることは困難」という状態になります。

こうなるとカウザルギー症状が認定されるためには受傷に伴って発症したものだと裏付けのある説明が必要になります。この説明は過去の状態を裏付けるという性質上とても難しいものになります。

また、神経の不完全損傷を説明すること自体が簡単なことではなく、この説明ができなければカウザルギ―は認定されません。場合によっては、カウザルギーに比べて神経損傷の程度が比較的緩やかな「神経損傷が微細」とされる反射性筋ジストロフィー(RSD)の基準も同時に視野に入れ考える必要があります。

認定基準上の「RSD、反射性交感神経性ジストロフィー/ Complex Regional Pain Syndrome」

明確な神経の損傷がない場合でもカウザルギー同様の症状が生ずる場合があります。これを自賠責ではカウザルギーとは別に反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)といいます。

原因として反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)は「微細な末梢神経の損傷」「主要な末梢神経に損傷が無」とし、その程度に応じて7級、9級、12級を認定するとされています。

反射性交感神経性ジストロフィーと認定されるには痛みを裏付けるレントゲン画像などの客観的な資料が必要です。骨が委縮している事、皮膚に異常が見られることを主に関節の拘縮や筋肉の状態に異常がある事などを客観的に証明する必要があります。
カウザルギーよりも神経損傷の重要度が低い代わりに、その他の説明に厳格性が必要となり、CRPSとなった被害者にはとても厳しいと言えるのが複合性局所疼痛症候群(CRPS)の現状です。

*客観的とは提出された資料から間違いなくそうだとわかるもので、担当医の見解は主観的と言えるので客観的な証明として採用されません。

CRPSの実態

ここからはCRPSの医学的な診断基準について書いてみたいともいます。

その外傷の大小を問わず、その外傷とは不釣り合いな痛みが長期に渡り発生する症状をCRPS(複合性局所疼痛症候群)といいます。このCRPSは様々な症状が人それぞれに発症することもあり、ジストロフィー、肩腕症候群、ズディック、慢性神経痛などの色々な診断名がつけられているのが現状と言われています。

そしてCRPSの特異な症状は、灼熱痛、アロディニア(感覚敏感)、膨張、皮膚の異常、筋力低下、関節可動域制限が特徴的で代表的なものと言われています。

これらの症状があれば(あるいはCRPSの診断)CRPSが認定されることはありません。診断と後遺障害の認定は別物であるということがわかる代表的な傷病と言えます。医師がCRPSと診断する際の基準と比べるとそのことが良くわかります。

国際疼痛学会の診断基準

国際疼痛学会のCRPSの診断基準では、次のようにCRPSの診断基準が設けられています。

1,何らかの外傷を受けて持続性の疼痛が生じていること
2,少なくとも4項目のうち3項目に1つの症状があること
感覚異常:感覚過敏、なにかが触れた程度でも異常な痛みを感じる
血管運動異常:皮膚温の左右差、皮膚色の変化、皮膚色の左右差
発汗異常/浮腫:浮腫、発汗の変化、発汗の左右差
運動異常・萎縮:可動域の低下、運動障害(筋力減少、振戦、ジストニア)、萎縮性変化(毛、爪、皮膚)
3,2つ以上の項目に1つ以上の徴候(他覚所見)があること

感覚異常:疼痛過敏(針で刺すことに対して)、感覚異常(軽い接触、温冷刺激、体部の圧刺激、関節運動に対して)
血管運動異常:皮膚温の左右差(1℃超)、皮膚色の変化、皮膚色の左右差
発汗異常/浮腫:浮腫、発汗の変化、発汗の左右差
運動異常・萎縮:可動域の低下、運動障害(筋力減少、振戦、ジストニア)、萎縮性
変化(毛、爪、皮膚)

4,他の診断に当てはまるもので無い事(CRPS特有)

日本のCRPS判定の指標

厚生労働省CRPS研究班から次の提唱が行われています。

A
病期にいずれか2項目以上の自覚症状が有ること。
ただし、それぞれの項目内のいずれかの症状を満たせばよい。
1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
2.関節可動域制限
3.持続性ないしは不釣合いな痛み、しびれたような針で刺すような痛み
(患者が自発的に述べる)、知覚過敏
4.発汗の亢進ないしは低下
5.浮腫
B
診察時において,以下の他覚所見の項目を2項目以上該当すること。
1.皮膚・爪・毛のうちいずれかに萎縮性変化
2.関節可動域制限
3.アロディニア(触刺激ないしは熱刺激による)ないしは痛覚過敏(ピンプリック)
4.発汗の亢進ないしは低下
5.浮腫

CRPS、RSD、カウザルギーの違い

「原因?そんなの関係ない。どうみてもCRPSでしょ。目の前にいる患者の症状に対して治療を行うだけだ」という医師の発言からもわかる通り、臨床上CRPStypeⅠやタイプⅡ、RSDなどと区別すること自体が有意とは言えません。(カウザルギーは症状)

しかし交通事故では後遺障害の基準ではやや古い診断基準が元になっています。古いといってもそれに明らかな間違いはなく、画一的にするために適したものです。

(執筆中)

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